2010年11月22日月曜日

【書籍】 阿部謹也、網野善彦、石井進、樺山紘一 『中世の風景』(上・下) 中公新書 1981.4

西洋史と東洋史の学者がヨーロッパと日本の中世の風景について語り合う。
パラレルではないが、それなりに相当する出来事なりがあることがわかる。

下巻 p.129 樺山紘一 
ヨーロッパでは、利子を取ることは道徳的にいけないことだというキリスト教教会の教義があって、そのために利子は長いあいだ公式には禁止されていました。もちろん教会法上の規制があったにもかかわらず、為替差益のかたちをとって、現実に支払われていたようです。この為替による合法化の背景には、ローマ法の通用力があります。ローマ法の場合には、利子という考え方を初めからもってますね。ローマ法はここでも合理主義者です。お金がお金の子供を生むということの算術計算を、社会のなかの当然の理だと考える。ほとんど「資本」の観念に近い。ですから、イタリア、スペインといったローマ法の支配圏では、教会法がどう規定していたかにかかわらず、かなり早くから実質的には利子という慣行が行われていたと考えるのがおそらく正しいんだろうと思うんです。
 そして、利子が正当であるかないかということが問題となるのは、貨幣経済の規模がもう少し大きくなってからのことなんですね。十三世紀から十四世紀にかけてになります。十一、二世紀という早い段階よりも、むしろあとになってからのほうが論争がホットになる。これは、ローマ法を伴った貨幣経済体系が、ヨーロッパの北に広まった段階で起こってきた問題なんですね。たんに教会のドクトリンの動きだけでは説明できないという側面があるようですね。

■ 書籍情報入手先   ★★★☆☆
  『「本の定番」ガイドブック』 13(2)中公新書 鷲田小彌太 2004.6
  『新書百冊』 第44番 坪内祐三 2003.4
■ 所在
  県立 市立書庫 大学旧

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