知識社会とは言え、イデオロギーは19世紀の遺産なのか?
最後のマルキストとして、ハンガリーのゲオルグ・ルカーチを紹介している。
p.204-205 ルカーチの魅力の秘密は、隠された異端の物語、常識とご都合主義道徳の拒絶、内的エリートとしての秘伝の教義とグノーシス派的信念の創造である、としている。
筆者は、ルカーチの著作として 『歴史と階級意識』 を、自伝として、カダーケイの『ゲオルク・ルカーチ 生涯・思想・政治』を挙げている。
p.242-243 『希望に逆らう希望』において、ナデシダ・マンデルスタムは「インテリゲンチアを征服する決定的な役割は、テロや賄賂ではなく、…誰ひとりとして断念することに耐えられない『革命』という言葉によって演じられた」と記している。ルカーチの場合、それは彼の著作の全ページを通して繰り返し響き続ける「世界史の精神」という言葉である。
p.243 ヘーゲルは述べた。「特に、善なる構想と正当な目的をもって」歴史は何度も何度も邪悪と悪徳を生み出してきた。そうして「われわれは堕落のこの普遍的な汚辱の悲しみに満たされるのを避けることはできない」。けれどもひとは「そのような感傷を高く超え出なければならない」。ヘーゲルは続けて言った。そして理性の狡知を働かせる情熱を喜んで引き受けなければならない。「個人は犠牲にされ、捨てられるのだ」。しかしこれこそはまさに歴史の目的に到達すべく「定められた人間の劫罰」である、と。知識人にとって、自分の真実を手に入れ、それを貪り喰うこと以上魅惑的な信念が他にあろうか。しかしわれわれは、悪魔が罠を仕掛けるその世紀の終わりに来てしまった。そして、ルカーチは、あの世でおそらく気づいたであろうが、ひとは「無意味性の深い淵」を一歩や二歩で乗り越えることなどできないのだ。
■ 書籍情報入手先 ★★☆☆☆
『「本の定番」ガイドブック』 8 情報 鷲田小彌太 2004.6
■ 所在
8F社会304ヘ 市立書庫304ベ 大学304.B33
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